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         1.3 最高神ゼウスi

 

 カリスト

 カリストは処女神アルテミス(ローマではディアナ)に仕えるニンフ(妖精)であった。ゼウス(ローマではユピテル)はアルテミスに変身してカリストに近づき、身ごもらせた。ゼウスの正妻ヘラは怒り、カリストを熊の姿に変えた。

 カリストの子アルカスが成長して狩りの名手となり、母とは知らずにカリストを射止めようとした。その時、ゼウスは気の毒に思い、アルカスも熊に変えて北の空においた。これが大熊座と小熊座である。

 ヘラはオケアノス(海神)とその妻テティス(海の女神)に「大熊と小熊が日に1度海に沈んで休むことができないように」と頼んだ。それで、大熊座と小熊座は1年中沈まないことになった。

 イ  オ

 イオはアルゴスの初代の王イーナコスの娘であり、ヘラの神殿に仕える巫女であった。ゼウス(ローマではユピテル)の子を産んだ最初の人間の女性でもある。

 ゼウスが雲に変身してイオを身ごもらせた。それから、ゼウスはヘラ(ローマではユノ)にばれないようにイオを牛の姿に変えた。

 ヘラはゼウスから雌牛を奪い、百目怪獣アルゴスに見張らせた。

 ゼウスは、イオを救うために伝令の神ヘルメスを遣わした。ヘルメスは心なごむ笛の音とアポロンからもらった眠くなる杖でアルゴスを眠らせて殺した。

 ヘラがアルゴスの目を鳥の羽にまとわせて孔雀が生まれた。よって、孔雀はヘラの象徴でもある。

 ヘラは次にイオの下に虻を送った。イオはエジプトに逃げて王妃となった。その頃、イーナコスは娘の身の上を嘆き、投身自殺した。その時の河の名はイーナコスとなった。やがて、イオはエジプトの女神イシスとして崇められるようになった。

 エウロペ

 ゼウス(ローマではユピテル)は牛に変身してフェニキア王アゲノルの娘エウロペを誘拐し、海を渡ってクレタ島に行った。エウロペはクレタ島でゼウスの子ミノス、ラダマンテュス、サルペドンを出産した後、クレタ王アステリオスと結婚した。ミノスはクレタ王朝を開いた。 

 エウロペの兄カドモスは、エウロペを捜す旅の途中でアテナ(戦いの女神)の助けを借りてテバイを建国した。

 セ メ レ

 セメレは英雄カドモスから生まれた人間の娘である。ゼウス(ローマではユピテル)がセメレに手を出した時、ヘラ(ローマではユノ)はセメレの乳母に変身し、「セメレの相手が本物のゼウスがどうか確かめるには、ゼウスに本来の姿でやってくるように頼むとよい」と助言した。ゼウスが電光と雷鳴を従えて戦車で現れると、セメレは焼け死んでしまった。

 ゼウスはセレメの体内から胎児を取り出し、自分の股に縫い込んだ。こうして酒の神ディオニソスが誕生した。ディオニソスが人間の子であるにもかかわらずオリンポスの神になれたのはゼウスの股に縫い込まれていたからである。

[左] プーシェ「ユピテル、ディアナ、カリスト」 カリストは、変身したユピテル(ゼウス)をディアナ(アルテミス)と信じて抱擁される。1759年、ネルソン・アトキンズ美術館、カンザス・シティー。

[右] ティツィアーノ「ディアナとカリスト」 ディアナがカリストの妊娠に気づいた場面。1558年頃、スコットランド国立美術館

[左] コレッジョ「イオ」(部分) 黒雲と化したユピテル(ゼウス)がイオを包む。1530-32年頃、ウィーン美術史美術館。

[右] ルーベンス「ヘルメスとアルゴス」 イオを見張る百目怪物アルゴスはヘルメスの心なごむ笛で眠りについた。17世紀前半。

[左] ティツィアーノ「エウロペの略奪」 白い牡牛に変身したユピテル(ゼウス)がエウロペを誘拐し、クレタ島に連れ去る。1559-62年、イザベラ・ステュワート・ガードナー美術館、ボストン

[右] モロー「ユピテルとセメレ」(部分) セメレはユピテル(ゼウス)の雷光で焼け死んでしまった。1895年、モロー美術館、パリ。

 ダ ナ エ

 ダナエはアルゴス王アクリシオスの娘である。「ダナエの息子がアクリシオスに死をもたらすだろう」という予言があったため、アクリシオスは彼女を青銅の塔に閉じ込めた。だが、ゼウス(ローマではユピテル)が黄金の雨に姿を変えて彼女に近づき、ペルセウスが生まれた。アクリシオスがダナエとペルセウスを追放し、2人はセリポス島に流れ着いた。

 ペルセウスは、王の嫌がらせでゴルゴンの首を取ることになった。彼は戦いの女神アテナの助けを借りてメドゥーサを退治した。その時、メドゥーサの傷口から天馬ペガソス(ペガサス座)と巨人クリュサオルが生まれた。アトラスがメドゥーサの首を見てアトラス山脈ができた。

 エチオピア王妃カシオペアは「(自分は)ネレイデス(海神の娘た)より美しい」と言ってしまったため、ポセイドンの怒りを買い、娘アンドロメダを生贄に差し出した。ペルセウスはポセイドンの放った怪獣も倒し、アンドロメダを娶ってアルゴスに戻った。

 アルゴスで、ペルセウスが競技会で投げた円盤が偶然アクリシオスに命中し、アクリシオスは死んでしまった。ペルセウスはアルゴスの王位を継承せず、小国テュリュンシスの王となった。それがやがて大国となり、ミュケナイとなった。

 レ  ダ

 アイトリア王テスティオスの娘レダは、スパルタ王テュンダレオスの妻であった。ゼウス(ローマではユピテル)は白鳥に変身してレダに近づき、関係をもった。

 そして、レダは2個の卵を産み、1個からはクリュタイムネストラとヘレネが生まれた。もう1個からは双子(ディオスクロイ)のカストルとポリュデウケスが生まれた。ヘレネとポリュデウケスはゼウスの子であり、クリュタイムネストラとカストルはテュンダレオスの子といわれている。

 ヘレネは、英雄アガメムノンの弟メネラオスの不実の妻で、トロイア戦争の引き金となる女性である。クリュタイムネストラは、アガメムノンの妻で、愛人アイギストスと組んで夫を殺してしまう女性である。

[上左] ティツィアーノ「ダナエ」 幽閉されていたダナエに、ユピテル(ゼウス)は黄金の雨に変身して交わる。ティツィアーノは黄金の雨を金貨で表した。1553年 - 1554年、右は侍女、左下に犬。プラド美術館マドリード、スペイン。

[上中] 「ペルセウスとメドゥーサ」 メドゥーサが生まれたばかりのペガソスを抱いている。左端はアテナ。前520年頃、セリヌンテ(イタリア)出土、パレルモ美術館(イタリア)。

[上右] チェッリーニ「ペルセウス」 足の下には首のないメドゥーサの身体が横たわる。1545-53年、ランツィ回廊、フィレンツェ、イタリア。

[下左] ウテヴァール「アンドロメダを救うペルセウス」 鎖でつながれたアンドロメダの後方でペルセウスが怪獣と戦っている。1611年、ルーヴル美術館、パリ。

[下中] 「アンドロメダを救うペルセウス」 ペルセウスの踝(くるぶし)に小さな翼が生えている。ナポリ国立考古学博物館、70年頃、ポンペイの「ディオスクーロイの家」出土。

[下右] ダ・ヴィンチ「レダと白鳥」 ダ・セストによる模写(1508-15年、ウフィツィ美術館、フィレンツェ、イタリア)。ダヴィンチのものは現存していない。

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