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  2.4 トロイア戦争i

 オイディプスと母

 ライオスは王ペロプスの王子クリュシッポスに手を出し、ペロプスに呪われた。テバイで王となったライオスとイオカステの間に子どもが生まれたが、デルポイのアポロン神殿で、ライオスが息子に殺されるという神託を受け、子の足にピンを刺して捨ててしまった。その子は羊飼いに拾われ、コリントス王ポリュボスの子オイディプスとして育てられた。ライオスは子どもができないよう、次々に少年に手を出した。それが結婚の神ヘラの怒りを買い、テバイが呪われた。

 一方、オイディプスはコリントスで成長した。だが、「国へ帰れば実父を殺し、実母を犯す」というデルポイの神託を受け、旅に出た。旅の途中でテバイ王ライオスと出会い、父とは知らずに誤って殺してしまった。テバイで怪物スピンクスを倒したオイディプスは王となり、イオカステを妻とし、立派な政治を行った。

 だが、テバイは疫病と飢饉とに襲われ、「前王ライオス殺しの犯人を処罰するべき」とのデルポイの神託を受けた。王オイディプスは犯人の目をつぶすと宣言した。ところが、イオカステとオイディプスが実の母子であることを知り、イオカステは自殺してしまった。オイディプスは約束を守り、自らの目をつぶした。

 オイディプスは失明と引き換えに予言の能力を得た。オイディプスの予言の通り、テバイは次々と悲劇に襲われた。

 3美神の争い

 ペレウスとテティス(海の女神)の結婚祝賀会が開かれた。宴たけなわのその時、エリス(不和の女神)が黄金のリンゴを投げた。そのリンゴには「最も美しい女に捧げる」と刻まれていた。こうしてヘラ(ユノ=結婚の女神、ゼウスの正妻)、アテナ(ミネルヴァ=知恵と戦いの女神)、アプロディテ(ヴィーナス=愛と美の女神)の戦いの火蓋が切られた。

 最高神ゼウスが調停に入ったが、3女神は気が強い。そこで、ゼウスはイデ山中に羊を飼うトロイア王プリアモスの子パリスに決めさせることにした。女神らはヘルメス(伝令の神)によってパリスのもとに連れて行かれた。

 3女神は自分が指名されるためにパリスに見返りとなる条件を提示した。ヘラは「パリスを全アジアの王とし、1番裕福な人間にする」、アテナは「すべての戦いでの勝利と賢くなる知恵を与える」、アプロディテは「人間の中で最も美しいヘレネをパリスの妻にする」とした。パリスは3女神を全裸にして審判を下した。

[左] クラナーハ「パリスの審判」 1530年、カールスルーエ州立美術館、ドイツ。左からパリス、使者メリクリウス、3美神。

[右] ルーベンス「パリスの審判」 1536年、ナショナル・ギャラリー、ロンドン。左から3美神、ヘルメス、リンゴを持つパリス、ヘラの頭上はエリス。

 トロイア戦争

 パリスはアプロディテを選び、ヘレネのいるスパルタに向かった。ヘレネはスパルタ王メネラオスの妻である。アプロディテの導きでヘレネを奪ったパリスはメネラオスを烈火の如く怒らせた。メネラオスは兄アガメムノンを総大将とし、トロイア攻略とヘレネ奪還をかけて攻撃を開始した。これがトロイア戦争である。

 アガメムノン率いるギリシア軍と、プリアモス率いるトロイア軍は力が拮抗しており、戦いは長期化した。ヘラ、アテナ、へパイストスらはギリシアにつき、アプロディテ、アポロン、アレスらはトロイアについた。

 ギリシア軍の英雄アキレウスは、自分が捕虜にしていたトロイアの美女を総大将アガメムノンに奪われたので気を悪くして、戦列から離れた。トロイア軍の英雄ヘクトルはパリスの兄だった。アキレウスの不在中、ヘクトルが大活躍し、ギリシア軍は窮地に追い込まれた。

 アキレウスの親友パトロクロスはアキレウスの鎧をまとって出陣したが、ヘクトルに破れた。親友を殺されたアキレウスは再び戦列に加わった。アキレウスとヘクトルの一騎打ちは、アキレウスの圧勝に終わった。ギリシアにはアテナがついていたからである。アテナは美の審判でパリスに全裸にされた上、選ばれなかったので、復讐の機会をうかがっていたのである。だが、アキレウスはパリスに弱点のかかとを射ぬかれて死んだ。

 アキレウスの活躍でギリシア軍は有利になったものの、なかなか決着はつかず、戦いは10年に及んだ。

 ギリシア軍の知将オデュセウスが作戦を考えた。巨大な木馬に兵士を潜ませ、トロイアの城門前に置き去りにする。他の兵士は撤退するふりをして引き上げる。トロイア軍は、ギリシア軍が木馬を差し出して逃げたと勘違いする。トロイア軍は場内に木馬を入れて、祝宴をあげる。トロイア兵が眠り込んだ頃、木馬に潜んだギリシア兵たちが城門を開け、外で待機するギリシア兵と伴にトロイア軍を襲撃する。この作戦が、ギリシア軍を完全勝利に導いた。これが、有名な「トロイアの木馬」作戦である。

 妻ヘレネを奪還したメネラオスは8年かけてスパルタに帰還し、その後は夫婦仲睦まじく過ごした。

[左] プリマティッチオ「ヘレネの陵辱」 1530~39年、バウズ博物館、バーナード・キャッスル、英国

[中] アングル「ユピテルとテティス」 1811年、グラネ美術館、エクサンプロヴァンス、フランス。テティスがユピテルに息子アキレウスの無事を願う。

[右] 映画「トロイ」(2004年、米国)に登場した木馬 現在はイーリオスに近いチャナッカレ(トルコ)に展示されている

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