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  3.1 セレネとエオス (不老長寿)i

 セレネの恋人

 朝はエオス(曙)が、昼はヘリオス(太陽)が空を駆け抜ける。ニュクス(夜)が空を漂う頃、セレネ(月)は、日によって顔を見せる角度を変えながら通り過ぎていく。

 ある夜、セレネは羊飼いのエンデュミオンに恋をした。セレネは、最高神ゼウスにエンデュミオンが永遠に若く美しくいられるようにお願いした。

 ゼウスは、起きていれば老化は避けられないと教え、普通に生きて年をとるのと、眠ったままで年をとらないのと、どちらを選ぶか尋ねた。セレネが永遠の若さを選び、エンデユミオンは永遠の眠りについた。セレネは眠ったままのエンデュミオンを愛しつ

づけ、50人の子を産んだ。

 眠ったままのエンデュミオンとは会話もできない。それゆえ、セレネが放つ青い光は寂しい。

 ギリシア神話は、ほとんどそのままローマ神話に引き継がれた。その際、「セレネ」と「アルテミス」が融合して「ディアナ」となった。「ダイアナ」は「ディアナ」の英語読みである。月そのものは「ルナ」とよばれる。

 エオスの誤算

 エオス(曙)も、人間の男ティトノスに恋をした。

 エオスはゼウスにティトノスに「永遠のいのち」を与えるよう懇願した。

 だが、ティトノスは年老いた。ゼウスはティトノスに「永遠の生命」を与えたが、「不老」を与えなかったからである。

 ティトノスはますます年老いたが、永遠に死ぬことはなかった。エオスはティトノスを忘れ去り、ティトノスは宮殿の奥深くに置き去りにされ、セミの姿となった。

 老婆シビュレ

 理性の神アポロンも人間の女シビュレに恋をした。彼は、セレネとエオスの話を教訓とし、シビュレには「永遠の若さ」も「永遠の生命」も与えなかった。そして、「手に握ることのできる砂粒の数だけの寿命」をシビュレに与えた。

 たしかにシビュレは長生きをした。ところが、アポロンはうっかり若さを与えなかった。シビュレはすっかり年をとり、美しさを失った。そして、俗世間を捨て、ひっそりと1人で長生きをした。

プッサン「セレネとエンデュミオン」

油彩、1627~30年頃。夜が明けてセレネとエンデュミオンが別れる場面。ヘリオスが乗った太陽の戦車の前で、エオスが露を振りまく。地上では、ニュクスが闇のカーテンを引く。

次回募集開始日は7/1(月)です。

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